ごるご君 働き方改革 うしろの 太郎
この物語は、当然のごとくフィクションである。
実在の、人物、企業、霊界の人物、企業、団体等には何ら関わりがない。
あの世の働き方改革を終えた、ごるご君だったが、困った問題を抱えていた。
ごるご君 働き方改革 死神のセキュリティチェック
↑ こんな感じで、前回は終わっている。
他人に後ろに立たれることを、極端に嫌う、ごるご君に、こともあろうに背後霊の太郎さんが、とり憑いてしまったのだ。
「俺の後ろに立つな!」
時々、するどい声で叫んで、回し蹴りをくれてやる。
ところが、太郎さんは背後霊なので、回し蹴りは当らない。
早く離れて欲しいと、ごるご君は切に願っているが、自力で、あの世に帰ることができなくなった太郎さんだ。
まあ、おかげで退屈な時の話し相手にはなるのだが、自分の後ろに気配があることが許せない、ごるご君である。
「ねぇねぇ太郎さん、そろそろ僕から離れてくれませんか。」
「私も、あの世に帰りたいのですが、自力では帰れなくて。誰かに憑いていないと存在がなくなりそうですし。」
こんな会話を何度も繰り返している。
あれから、ずいぶん月日も経った。
「太郎さんは、お迎えの人をやっていた時の給料は、いくらだった?」
「日によって違いますが、1人運べは、50万円ぐらいを、5人で分ける感じでした。死神さんが、ピンはねすると少なくなりました。」
「それじゃ、1回あたり10万ぐらい。月に20回お迎えに行ったら、200万じゃん。」
ごるご君のアルバイトの時給は、1,120円である。
200万円稼ごうとすると、1,785時間働かなければならない。
24時間働いて、約75日必要だ。
つまり、ごるご君がいくらバイトで稼いでも、太郎さんの給料には勝てないということだ。
「うらやましいよ、太郎さん。いくらか回してくれない。」
「そう見えると思いますが、上の世界はインフレで、月々の生活費が180万円以上は、かかります。20日働ければいいのですが、病気をすると困難です。もうすぐ、消費税も増税されそうなので、生活苦です。調査によると、年金以外に2億円ぐらい貯めておかないと、安定した老後は送れないようです。」
地獄の沙汰も金次第とは、うまく言ったものだ。ごるご君は思った。
「ところで、お迎えの人の人数は、足りているの?」ごるご君が聞いた。
「足りているなら、私なんかは、お払い箱になっているかもしれません。突発の、お迎えが入っても、5人で1チームということになっているので、仕事があります。」
「それじゃ太郎さんは、他の仕事があったら、他の仕事をやる?」
「できれば、もっと楽な仕事をしたいです。お迎えの人で、2000歳を越えている人の多くは、そう思っています。」
「う~ん。」ごるご君は考えた。
翌日、ごるご君は休日であった。
「太郎さん、今日は買い物をして、上の世界に行こう。」
ごるご君が、太郎さんに話しかけた。
「まだ、眠いのですが。」
寝ぼけた声で太郎さんが答える。
「それじゃ、買い物が終わるまで、寝てていいよ。」
今日の、ごるご君は寛容だ。
ごるご君は、産業用ドローンを買いに出かけた。
約30kgの物を運ぶことができる産業用ドローンは、1機あたり約500万円だった。
先日、某国のスランプ大統領暗殺計画でもらった金で、10機ほど買った。
スランプ暗殺? ↓
ごるご君 リターンズ
「これで、太郎さんは、楽に働けるはず。」
ごるご君は、ほくそ笑んだ。
ごるご君のアパートは狭い。
布団を敷く時にはテーブルを片付けなければならない。1部屋である。風呂とトイレはある。ユニットバスというやつだ。小さな流しもある。この部屋で、あかの他人の背後霊と過ごすのは、つらい。ここは改革だ。
「太郎さん、起きて。」
ごるご君が言った。
「おはようございます。」
やっと、起きだしてきた太郎さんだ。
背後霊のくせに、睡眠時間が長い。それなのに突然起きて、背後に気配を感じさせる。
ごるご君にとっては、とても迷惑な存在だ。
「太郎さん、前のように、あの世まで道案内して。ジェット戦闘機を飛ばすから。」
ごるご君は言った。
「成田から、あの世まで行った時のようにですか?」
太郎さんが聞く。
「そう。簡単でしょ。」
ごるご君の言葉に、太郎さんは困惑ぎみだ。
「その前に、太郎さん。昨日、何を食べた?」
「いえ、特に変わったものは、食べていません。」
「にんにく食べてるだろう。そして酒も飲んでるみたいだし。」
「ほんの少しです。」
ごるご君は背後に敏感だ。
「話を続けますね。成田の時は、ごるご君は幽体だったから楽に上の世界に行けました。でも、今のごるご君は、生身なので簡単ではないかもしれません。」
太郎さんが言う。
「それじゃ、僕が幽体になればいいのですか?」
ごるご君は言う。
「かってに幽体には、なれません。下手な死に方をすると自縛霊になって、そこから動けなくなってしまいます。」
「それじゃ、上の世界には行けないのですか?」
ごるご君の言葉に、太郎さんは、
「どうしても、行きたいのですか?」
と、言った。
「どうしてもってわけではないけど、きっと太郎さんも幸せになれると思って。」
実は、ごるご君の本心は、後ろの背後霊から解放されたいだけであった。
「そうですか、死神さんが認めてくれるなら、何とかなりますが。」
太郎さんが言った。
「死神さんに連絡できる?」
「それは、できます。恐れ多い存在ですけど。」
「それじゃ、連絡してみて。僕に電話代わってもらっていいから。」
太郎さんは、スマホを取り出して、死神さんに連絡した。
「もしもし、死神さんですか?お迎えの太郎です。ごるご君が上の世界に行きたいと言っているのですが、連れていっていいですか?」
「・・・・・・・・。」
「そうですか、特例ということでは、ダメですか?」
「・・・・・・・・。」
会話が続いているようだ。
なんか、埒があかない。
「電話かして。」
ごるご君が太郎さんの電話を取り上げた。
「もしもし、死神さん。ごるご君です。」
「ああ、ごるご君、お元気ですか?」
「元気、元気。今から、そっちに行きたいんだけど許可ちょうだい。」
「いや、閻魔大王様の許可も必要なので、時間がかかります。」
死神さんは、ごるご君の来訪を避けたそうだ。
「それじゃ、今から太郎さんと一緒にジェット戦闘機で行くから、10分以内に許可もらっておいて。」
ごるご君は、簡単に言う。
「書類も出さないといけないので、3日ぐらいは、かかると思いますが。」
「3日?」ごるご君の声は怒っている。
「申し訳ございません。3時間待ってください。」
慌てたように死神さんが言う。
「30分で、なんとかして。それと必要経費で買い物したので、5000万円ほど準備しておいて。」
「その金額は、私の決裁権を越えています。稟議通るまで待ってもらえますか?」
「ふざけるな!おまえが立て替えろ。」
「はい。わかりました。」
死神は、ごるご君に従順である。
かつて、ごるご君の背後に立ったために、テンプルに回し蹴りをあびせられ、最後は取り押さえられて大鎌まで、奪われた。しかも、ごるご君は、成田空港に大鎌を置き忘れたので、死神は閻魔大王に、こっぴどく叱られた。おかげで今も減給処分を受けている。
ごるご君は、アパートを出た。
アパートの前の空き地に置いている、F-22 ラプターに乗り込んだ。
ステルス型ジェット戦闘機というやつだ。
先ほど買ってきた、ドローンも載せた。
太郎さんは、かってに背後についている。
「さて、行こうか。」
ごるご君は、エンジンを始動させたと思ったら、暖機運転もそこそこにカタパルトを使って離陸した。
「騒音を出すと、叱られるから。」
ごるご君は、操縦桿を引いた。
機体は、ぐんぐん上昇していく。
「ごるご君、スピード違反じゃないですか?目がまわりそうです。」
太郎さんが言う。
「いいから、しっかり道案内して。」
ごるご君は、意に介さない。
「このまま、上昇していいの?」
「スピードが早すぎて、どのへんかわかりません。ゆっくり旋回しながら上昇してください。」
ごるご君は、左旋回しながら上昇を続ける。
無線に何か入ってくるが、面倒なので無視することにした。この機体を追尾できる航空機は、ほとんどないはずだ。
太郎さんが、背中でモゴモゴしている。
「どうした太郎さん。」
「申し訳ないです。すでに通り過ぎているみたいです。それと乗物酔いかも。」
ごるご君は不機嫌になった。
この機体は、燃費も悪い。
「じゃ、どっちに行けばいいの。」声を荒げて太郎さんに聞いた。
「ゆっくり右に旋回しながら下降してください。」
「右旋回だって!僕は右折が苦手なの知ってるでしょ。」
「そんなことを言われましても。」
太郎さんは背中で焦っている。
「使えない背後霊だ。」
ごるご君は、機体を右に旋回させて下降を始めた。
左旋回の時と違って機体の動きがぎこちない。
「だいたい、後ろに背後霊がいるのがよくない。おまけに、にんにくまで食ってやがる。」
ごるご君は、ブチブチと愚痴っている。
「帰れなくなったんだから、仕方ないでしょ。」
太郎さんが反論した。気配が強くなる。
「俺の後ろに立つな!」
ごるご君は、鋭く叫んだ。
「立ってないもん。憑いてるだけだし。」
ふてくされたように太郎さんが反論する。
「屁理屈を言うな!」
ごるご君の機嫌がだんだん悪くなる。
その時、太郎さんが声をあげた。
「ごるご君、見えてきました。次を左に曲がってください。」
ごるご君は、素早く機体を左に旋回させる。
「ゆっくり飛んでください。もうすぐ到着です。」
太郎さんが言う。
そういえば、あの世の陸地は、あまり広くなかった。
前に来た時はヘリだったので楽に着陸できたが、ジェット戦闘機を着陸させるには、そこそこの距離が必要だ。ごるご君のアパートの前の空き地には、カタパルトとアレスティング・ワイヤーを隠して装備してあるが、あの世に、そんな設備があるとは思えない。
「太郎さん、悪いけど死神に電話して、アレスティング・ワイヤーを装備しておくように言って。」
太郎さんは、すぐに死神に電話した。
「もしもし、太郎です。ごるご君からの伝言です。もうすぐ到着なのでアレスティング・ワイヤーを装備しておいて欲しいそうです。」
「・・・・・・・・・。」
なんか、電話の向こうで、あれこれ言っているようだ。
「電話貸して。」
ごるご君は、太郎さんからスマホを取り上げた。
「もしもし。何?アレスティング・ワイヤーがわからない?昔、空母に乗っていた人を探し出して聞け。10分以内に装備しておいてね。それじゃ。」
「ごるご君、もうあの世の入口です。」
陸地が見えるが、この高度では着陸できない。何周か旋回して着陸しよう。
陸地では、人が、動いているのが見える。
アレスティング・ワイヤーを装備しているようだ。
10分ほど経った。
「ちょっと死神に電話して。」
太郎さんが、スマホを出して、コールが始まると、ごるご君がスマホを取った。
「もしもし、死神さん。ごるご君です。もう準備できた?」
「たぶん大丈夫だと思います。」自信なさげな声だ。
「着陸に失敗したら建物に突っ込むかもしれないから、ワイヤーはしっかり固定しておいてね。」
ごるご君は電話を切って着陸態勢に入った。
さすがのごるご君も、着陸は緊張する。
無言で操縦桿を握る。
十分に速度を落としつつ、地上に近づく。
ギアダウン!
着地!
地上に降りた途端に、逆噴射させる。
機体は上手くアレスティング・ワイヤーに絡んだ。
妙にふわふわとした地面なのだが、大きなショックもなく機体は無事に着陸した。
キャノピーを開いた、ごるご君は、F22ラプターから降り立った。
ぞろぞろと人が、出てくる。
陸地に降りた途端に太郎さんの気配は背中から消えた。
そして、ごるご君の前に立っている。
「太郎さん。離れたね。」
ほっとしたように、ごるご君が言った。
お迎えの人が出迎えてくれる。
ふだんは、あの世からのお迎えの人たちだ。
「みんな久しぶり。」
ごるご君は、みんなに声をかけた。
「ようこそ、ごるご君。」
お迎えの人々は嬉しそうに言った。
前に一緒に仕事をした仲間だ。
再び会えたことを喜んでいる。
「入口に装備したセキュリティゲートは上手く作動している?」
ごるご君が問いかけた。
「ばっちりです。専任の担当者も3交代で仕事しています。おかげでテロも不審物の持込もなくなりました。先月から麻薬捜査犬も配備したので、この世界はずいぶん住みやすくなっています。」
「それは、よかった。」
そう言った時に、設置を担当した、お迎えの人が前に来た。
「今では、私がこの施設の責任者です。給料も上がりました。ごるご君ありがとうございます。」と言った。
「よかったですね。」
二人は、固く握手した。
ふと、ごるご君が、F22ラプターを見た。
操縦席には、ごるご君が座ったままだ。
ここで話をしている、ごるご君は幽体のみなのだ。
不思議な世界だ。
「ところで死神さんは、どこにいるのですか?」
お迎えの人の一人が答えた。
「死神さんは、最近は建物の中にいます。セキュリティーゲートを通った後の人の案内をしています。」
「それでは、死神さんの仕事も楽になったのかな?」
ごるご君が聞いた。
「かなり楽になったようです。ただ・・・。」
お迎えの人は、言いにくそうだ。
「なんか、問題があったのですか?」
ごるご君が聞く。
「いえ、待合室で待つ人が多くなりすぎているのが少し問題になっているようです。」
「それでは、待合室に連れていって。」
ごるご君は、新たな改革が必要だと思いながら言った。
セキュリティゲートを抜けて、ごるご君は待合室に入った。
麻薬捜査犬が、ごるご君の近くにきて匂いを確認している。
「太郎さんの匂いは、にんにく臭いだろうな。」
心の中で、ごるご君は思った。
待合室では、死神さんが次々に客をさばいていた。
死神さんと、事務室の職員が対応しているが、待っている人が多すぎるようだ。
「死神さん!」
ごるご君は、死神に呼びかけた。
「ごるご君、お久しぶりです。」
死神は、深々と頭を下げた。
「忙しそうだね。」
ごるご君は、微笑んだ。
「おかげさまで。」
死神も愛想笑いを浮かべる。
「ところで死神さん、お迎えの人って、重労働でしょ?」
ごるご君は言った。
「そうですね。若い人が募集してくれたらいいのですが、最近は高齢者が増えて、きつい仕事になっているようです。それでも働かなければならない人も多くいます。」
「そうだよね。そこで少し提案があるんだけど。」
ごるご君は、いじわるそうな顔をして言った。
「なにか、方法があるのですか?このままだと年金の受給以上に霊体の受け入れが困難になりそうだと先日の会議でも討議していたことです。」
死神は、言った。
「ちょっと、こっちに来て。」
ごるご君は、死神の黒い衣装の袖をひっぱる。
死神は、大鎌を奪われないように隠しながら、ごるご君について行く。
入ってきたセキュリティゲートから出ることはできなくなっていた。たまに逃亡しようとする人が、いるらしい。通用口というものがある。手前に警備室みたいな部屋がある。扉の前には警備の人間が7人ほど立っている。死神が、外に出るための手続きをしている。すぐに手続きは終わったようだ。
「前に比べると面倒になったね。」
「閻魔大王様との面談の前に逃げ出したヤツがいて、捕まえるまでに3日もかかってしまいました。セキュリティゲート側の扉は、逆方向には行けないように加工しました。でも、私や、お迎えの人たちは、外に出る必要があるので、通用口を作りました。基本的には事前に手続きをしておかないと、通れないようになっています。」
「無理に通ろうとしたら、どうなるの。」
「地獄行きの終身刑です。」
死神は、遠い目をして言った。
F22ラプターを駐機している所まで死神をひっぱって来た、ごるご君は、積んでおいた、産業用ドローンを取り出した。
「何ですか?これは?」
死神は、初めて見るドローンを不思議そうに見ている。
「これは、ドローンだよ。ちょっと待ってて。」
ごるご君は、すばやくドローンを組み立てる。そして送信機を操った。
ドローンは、小さな音をたてて浮上する。
「これは?何をするものですか?」
死神は、不思議そうに聞く。
「下の世界では、ドローンで宅配便の荷物を運ぶことも実施されている。これを使えば、お迎えの人の人数は半分にできるよ。」
ごるご君は、得意そうに言った。
「1機で、約30kgの重さのものを運ぶことができる。一般の人の体重だったら、これが2機か3機あれば十分に運べる。GPSも搭載しているので位置の情報さえ入力してあげれば、無人でもここまで連れてくることができる。」
「えっ、そんなことができるのですか?」
死神は不思議そうに見つめている。
「まあ、最初は人が管理したほうがいいから、迎えの人を2人ぐらいと、このドローンを2機ぐらいで実験したらいいんじゃない。うまくできるようなら、お迎えの人は1人にして、ドローンは体の大きさに合わせて数を決めて飛ばせばいいと思うよ。」
「そうですか?」
死神さんはまだ実感がわかないようだ。
そこに緊急放送が流れた。
「お迎えCチームさん、お迎えCチームさん。豊島区の佐藤さんのお迎えに向かってください。」
死神の前に、お迎えCチームが湧き出るように現れた。
「ちょうどいいじゃん。死神さん。」
ごるご君が言った。
「今回は、2人とドローン3機で行ってみようよ。僕も行くから。」
「お迎えは、5人で行くものと決まっているのですが。」
死神さんは、困惑したように言う。
「何事もチャレンジだって。君と君、一緒に来て。」
そう言って、ごるご君は2人だけを連れて、お迎えに出かけた。
迎える人の素性がわからないので、3機のドローンを持って行った。
豊島区に到着すると、お年を召したご婦人が、お迎えを待っていた。
ごるご君は素早く2機のドローンを装備した。
送信機を、うまく使う。
一緒に来たお迎えの2人は、びっくりしている。
ごるご君の操縦で、ドローンは簡単に上空に向かう。
迎えられる、ご婦人は、「こんなに快適な旅なのですね。」と感想をもらした。
ネロとパトラッシュが天使に囲まれて昇天するかのように、ドローンは揺れることもなく、上空に上がっていく。
「太郎さんが行き先を入力したら、GPSが簡単に目的地まで運んでくれるようになるよ。」
ごるご君の言葉に、2人のお迎えの人も感動している。
「これまで重いと思いながら働いていたのですが、ほとんど力は使わなくても大丈夫ですね。」
お迎えの人は、ドローンを使うことに賛成のようだ。
以前に太郎さんが、ごるご君の頭を持って、5人のお迎えの人が上の世界まで、ごるご君を運んだときには、何度か、ごるご君の頭は下に向けられてしまったが、ドローンを使った昇天では、そのようなこともなかった。惜しまれながらではあるが、間もなく昇天は終わった。
お年を召したご婦人は、上の世界に着くと、「ありがとうございました。」と言って、お迎えの人の案内で、セキュリティゲートに向かって歩いて行った。
「どう?見てた?」
ごるご君は、死神に聞いた。
「すばらしい。」
死神さんは感動しているようだ。
「10機ほど買ってきたから、上手く使って。きっと太郎さんなら位置情報を正確に入力できると思うので、うまく活用できると思うよ。」
「ごるご君、ありがとうございます。」
お迎えの人々が口をそろえて言った。
「これ、払って。」
きびしい口調になった、ごるご君が死神に向かって言った。
手渡した領収書には、5,000万円と書かれてある。
「今ですか?」
死神さんが困ったように言う。
「後でもいいけど、遅くなればなるほど金利がつくから、早く払ったほうがいいと思うよ。」
ごるご君は、静かに言った。
「わかりました。」
死神さんは、消え入りそうな声で言った。
「追加購入が必要だったら、1機あたり700万円で売ってあげるから。今回は、まとまっているので特別価格だよ。」
恩着せがましく、ごるご君は言った。
「ありごとうございます。」
こうして、ごるご君は上の世界の仕事を、またひとつ改革したのであった。
「太郎さん、位置入力をよろしく。1度入力すれば繰り返しの仕事になるので楽になると思うよ。」
ごるご君は、太郎さんに向かって言った。
「ごるご君、ありがとう。」
太郎さんは、うるうるしている。
「特殊作業なので、給料いっぱいもらってね。死神には、僕からも言っておくから。」
近くにいる死神は、何も言えない。
ごるご君は、死神の近くに行って、何やら言っている。
太郎さんの給料について話した後で、携帯の番号も聞き出した。
そして、太郎さんの携帯の番号も聞いた。
「もし、死神が給料を出し渋ったら、飛んで来るから。いつでも連絡して。」
「それじゃ、明日はアルバイトがあるから、そろそろ帰ります。」
そう言って、ごるご君は、F22に乗りこんだ。
座っている本体を押しのけるようにして、操縦席に座る。
狭いが仕方ない、本体を置いて帰るわけには、いかない。
次からは、時間かかるけど、ヘリで来ることにしよう。
ごるご君は思った。
みんなが手を振っている。
エンジンを起動させた、ごるご君は、手を振ってから離陸しはじめた。
滑走距離が足りない。
発進して、すぐに真下に落ちていく感覚だった。
すぐに機体を立て直した、ごるご君は、レーダーとGPSを駆使して自宅に向かった。
数分後には、アパートに到着した。
何か、忘れているような気がする。
「太郎さんが、いなくなったからかな。」
漠然と思った。
1週間後、アルバイトの給料日だった。
ふと、思い出す。
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実在の、人物、企業、霊界の人物、企業、団体等には何ら関わりがない。
あの世の働き方改革を終えた、ごるご君だったが、困った問題を抱えていた。
ごるご君 働き方改革 死神のセキュリティチェック
↑ こんな感じで、前回は終わっている。
他人に後ろに立たれることを、極端に嫌う、ごるご君に、こともあろうに背後霊の太郎さんが、とり憑いてしまったのだ。
「俺の後ろに立つな!」
時々、するどい声で叫んで、回し蹴りをくれてやる。
ところが、太郎さんは背後霊なので、回し蹴りは当らない。
早く離れて欲しいと、ごるご君は切に願っているが、自力で、あの世に帰ることができなくなった太郎さんだ。
まあ、おかげで退屈な時の話し相手にはなるのだが、自分の後ろに気配があることが許せない、ごるご君である。
「ねぇねぇ太郎さん、そろそろ僕から離れてくれませんか。」
「私も、あの世に帰りたいのですが、自力では帰れなくて。誰かに憑いていないと存在がなくなりそうですし。」
こんな会話を何度も繰り返している。
あれから、ずいぶん月日も経った。
「太郎さんは、お迎えの人をやっていた時の給料は、いくらだった?」
「日によって違いますが、1人運べは、50万円ぐらいを、5人で分ける感じでした。死神さんが、ピンはねすると少なくなりました。」
「それじゃ、1回あたり10万ぐらい。月に20回お迎えに行ったら、200万じゃん。」
ごるご君のアルバイトの時給は、1,120円である。
200万円稼ごうとすると、1,785時間働かなければならない。
24時間働いて、約75日必要だ。
つまり、ごるご君がいくらバイトで稼いでも、太郎さんの給料には勝てないということだ。
「うらやましいよ、太郎さん。いくらか回してくれない。」
「そう見えると思いますが、上の世界はインフレで、月々の生活費が180万円以上は、かかります。20日働ければいいのですが、病気をすると困難です。もうすぐ、消費税も増税されそうなので、生活苦です。調査によると、年金以外に2億円ぐらい貯めておかないと、安定した老後は送れないようです。」
地獄の沙汰も金次第とは、うまく言ったものだ。ごるご君は思った。
「ところで、お迎えの人の人数は、足りているの?」ごるご君が聞いた。
「足りているなら、私なんかは、お払い箱になっているかもしれません。突発の、お迎えが入っても、5人で1チームということになっているので、仕事があります。」
「それじゃ太郎さんは、他の仕事があったら、他の仕事をやる?」
「できれば、もっと楽な仕事をしたいです。お迎えの人で、2000歳を越えている人の多くは、そう思っています。」
「う~ん。」ごるご君は考えた。
翌日、ごるご君は休日であった。
「太郎さん、今日は買い物をして、上の世界に行こう。」
ごるご君が、太郎さんに話しかけた。
「まだ、眠いのですが。」
寝ぼけた声で太郎さんが答える。
「それじゃ、買い物が終わるまで、寝てていいよ。」
今日の、ごるご君は寛容だ。
ごるご君は、産業用ドローンを買いに出かけた。
約30kgの物を運ぶことができる産業用ドローンは、1機あたり約500万円だった。
先日、某国のスランプ大統領暗殺計画でもらった金で、10機ほど買った。
スランプ暗殺? ↓
ごるご君 リターンズ
「これで、太郎さんは、楽に働けるはず。」
ごるご君は、ほくそ笑んだ。
ごるご君のアパートは狭い。
布団を敷く時にはテーブルを片付けなければならない。1部屋である。風呂とトイレはある。ユニットバスというやつだ。小さな流しもある。この部屋で、あかの他人の背後霊と過ごすのは、つらい。ここは改革だ。
「太郎さん、起きて。」
ごるご君が言った。
「おはようございます。」
やっと、起きだしてきた太郎さんだ。
背後霊のくせに、睡眠時間が長い。それなのに突然起きて、背後に気配を感じさせる。
ごるご君にとっては、とても迷惑な存在だ。
「太郎さん、前のように、あの世まで道案内して。ジェット戦闘機を飛ばすから。」
ごるご君は言った。
「成田から、あの世まで行った時のようにですか?」
太郎さんが聞く。
「そう。簡単でしょ。」
ごるご君の言葉に、太郎さんは困惑ぎみだ。
「その前に、太郎さん。昨日、何を食べた?」
「いえ、特に変わったものは、食べていません。」
「にんにく食べてるだろう。そして酒も飲んでるみたいだし。」
「ほんの少しです。」
ごるご君は背後に敏感だ。
「話を続けますね。成田の時は、ごるご君は幽体だったから楽に上の世界に行けました。でも、今のごるご君は、生身なので簡単ではないかもしれません。」
太郎さんが言う。
「それじゃ、僕が幽体になればいいのですか?」
ごるご君は言う。
「かってに幽体には、なれません。下手な死に方をすると自縛霊になって、そこから動けなくなってしまいます。」
「それじゃ、上の世界には行けないのですか?」
ごるご君の言葉に、太郎さんは、
「どうしても、行きたいのですか?」
と、言った。
「どうしてもってわけではないけど、きっと太郎さんも幸せになれると思って。」
実は、ごるご君の本心は、後ろの背後霊から解放されたいだけであった。
「そうですか、死神さんが認めてくれるなら、何とかなりますが。」
太郎さんが言った。
「死神さんに連絡できる?」
「それは、できます。恐れ多い存在ですけど。」
「それじゃ、連絡してみて。僕に電話代わってもらっていいから。」
太郎さんは、スマホを取り出して、死神さんに連絡した。
「もしもし、死神さんですか?お迎えの太郎です。ごるご君が上の世界に行きたいと言っているのですが、連れていっていいですか?」
「・・・・・・・・。」
「そうですか、特例ということでは、ダメですか?」
「・・・・・・・・。」
会話が続いているようだ。
なんか、埒があかない。
「電話かして。」
ごるご君が太郎さんの電話を取り上げた。
「もしもし、死神さん。ごるご君です。」
「ああ、ごるご君、お元気ですか?」
「元気、元気。今から、そっちに行きたいんだけど許可ちょうだい。」
「いや、閻魔大王様の許可も必要なので、時間がかかります。」
死神さんは、ごるご君の来訪を避けたそうだ。
「それじゃ、今から太郎さんと一緒にジェット戦闘機で行くから、10分以内に許可もらっておいて。」
ごるご君は、簡単に言う。
「書類も出さないといけないので、3日ぐらいは、かかると思いますが。」
「3日?」ごるご君の声は怒っている。
「申し訳ございません。3時間待ってください。」
慌てたように死神さんが言う。
「30分で、なんとかして。それと必要経費で買い物したので、5000万円ほど準備しておいて。」
「その金額は、私の決裁権を越えています。稟議通るまで待ってもらえますか?」
「ふざけるな!おまえが立て替えろ。」
「はい。わかりました。」
死神は、ごるご君に従順である。
かつて、ごるご君の背後に立ったために、テンプルに回し蹴りをあびせられ、最後は取り押さえられて大鎌まで、奪われた。しかも、ごるご君は、成田空港に大鎌を置き忘れたので、死神は閻魔大王に、こっぴどく叱られた。おかげで今も減給処分を受けている。
ごるご君は、アパートを出た。
アパートの前の空き地に置いている、F-22 ラプターに乗り込んだ。
ステルス型ジェット戦闘機というやつだ。
先ほど買ってきた、ドローンも載せた。
太郎さんは、かってに背後についている。
「さて、行こうか。」
ごるご君は、エンジンを始動させたと思ったら、暖機運転もそこそこにカタパルトを使って離陸した。
「騒音を出すと、叱られるから。」
ごるご君は、操縦桿を引いた。
機体は、ぐんぐん上昇していく。
「ごるご君、スピード違反じゃないですか?目がまわりそうです。」
太郎さんが言う。
「いいから、しっかり道案内して。」
ごるご君は、意に介さない。
「このまま、上昇していいの?」
「スピードが早すぎて、どのへんかわかりません。ゆっくり旋回しながら上昇してください。」
ごるご君は、左旋回しながら上昇を続ける。
無線に何か入ってくるが、面倒なので無視することにした。この機体を追尾できる航空機は、ほとんどないはずだ。
太郎さんが、背中でモゴモゴしている。
「どうした太郎さん。」
「申し訳ないです。すでに通り過ぎているみたいです。それと乗物酔いかも。」
ごるご君は不機嫌になった。
この機体は、燃費も悪い。
「じゃ、どっちに行けばいいの。」声を荒げて太郎さんに聞いた。
「ゆっくり右に旋回しながら下降してください。」
「右旋回だって!僕は右折が苦手なの知ってるでしょ。」
「そんなことを言われましても。」
太郎さんは背中で焦っている。
「使えない背後霊だ。」
ごるご君は、機体を右に旋回させて下降を始めた。
左旋回の時と違って機体の動きがぎこちない。
「だいたい、後ろに背後霊がいるのがよくない。おまけに、にんにくまで食ってやがる。」
ごるご君は、ブチブチと愚痴っている。
「帰れなくなったんだから、仕方ないでしょ。」
太郎さんが反論した。気配が強くなる。
「俺の後ろに立つな!」
ごるご君は、鋭く叫んだ。
「立ってないもん。憑いてるだけだし。」
ふてくされたように太郎さんが反論する。
「屁理屈を言うな!」
ごるご君の機嫌がだんだん悪くなる。
その時、太郎さんが声をあげた。
「ごるご君、見えてきました。次を左に曲がってください。」
ごるご君は、素早く機体を左に旋回させる。
「ゆっくり飛んでください。もうすぐ到着です。」
太郎さんが言う。
そういえば、あの世の陸地は、あまり広くなかった。
前に来た時はヘリだったので楽に着陸できたが、ジェット戦闘機を着陸させるには、そこそこの距離が必要だ。ごるご君のアパートの前の空き地には、カタパルトとアレスティング・ワイヤーを隠して装備してあるが、あの世に、そんな設備があるとは思えない。
「太郎さん、悪いけど死神に電話して、アレスティング・ワイヤーを装備しておくように言って。」
太郎さんは、すぐに死神に電話した。
「もしもし、太郎です。ごるご君からの伝言です。もうすぐ到着なのでアレスティング・ワイヤーを装備しておいて欲しいそうです。」
「・・・・・・・・・。」
なんか、電話の向こうで、あれこれ言っているようだ。
「電話貸して。」
ごるご君は、太郎さんからスマホを取り上げた。
「もしもし。何?アレスティング・ワイヤーがわからない?昔、空母に乗っていた人を探し出して聞け。10分以内に装備しておいてね。それじゃ。」
「ごるご君、もうあの世の入口です。」
陸地が見えるが、この高度では着陸できない。何周か旋回して着陸しよう。
陸地では、人が、動いているのが見える。
アレスティング・ワイヤーを装備しているようだ。
10分ほど経った。
「ちょっと死神に電話して。」
太郎さんが、スマホを出して、コールが始まると、ごるご君がスマホを取った。
「もしもし、死神さん。ごるご君です。もう準備できた?」
「たぶん大丈夫だと思います。」自信なさげな声だ。
「着陸に失敗したら建物に突っ込むかもしれないから、ワイヤーはしっかり固定しておいてね。」
ごるご君は電話を切って着陸態勢に入った。
さすがのごるご君も、着陸は緊張する。
無言で操縦桿を握る。
十分に速度を落としつつ、地上に近づく。
ギアダウン!
着地!
地上に降りた途端に、逆噴射させる。
機体は上手くアレスティング・ワイヤーに絡んだ。
妙にふわふわとした地面なのだが、大きなショックもなく機体は無事に着陸した。
キャノピーを開いた、ごるご君は、F22ラプターから降り立った。
ぞろぞろと人が、出てくる。
陸地に降りた途端に太郎さんの気配は背中から消えた。
そして、ごるご君の前に立っている。
「太郎さん。離れたね。」
ほっとしたように、ごるご君が言った。
お迎えの人が出迎えてくれる。
ふだんは、あの世からのお迎えの人たちだ。
「みんな久しぶり。」
ごるご君は、みんなに声をかけた。
「ようこそ、ごるご君。」
お迎えの人々は嬉しそうに言った。
前に一緒に仕事をした仲間だ。
再び会えたことを喜んでいる。
「入口に装備したセキュリティゲートは上手く作動している?」
ごるご君が問いかけた。
「ばっちりです。専任の担当者も3交代で仕事しています。おかげでテロも不審物の持込もなくなりました。先月から麻薬捜査犬も配備したので、この世界はずいぶん住みやすくなっています。」
「それは、よかった。」
そう言った時に、設置を担当した、お迎えの人が前に来た。
「今では、私がこの施設の責任者です。給料も上がりました。ごるご君ありがとうございます。」と言った。
「よかったですね。」
二人は、固く握手した。
ふと、ごるご君が、F22ラプターを見た。
操縦席には、ごるご君が座ったままだ。
ここで話をしている、ごるご君は幽体のみなのだ。
不思議な世界だ。
「ところで死神さんは、どこにいるのですか?」
お迎えの人の一人が答えた。
「死神さんは、最近は建物の中にいます。セキュリティーゲートを通った後の人の案内をしています。」
「それでは、死神さんの仕事も楽になったのかな?」
ごるご君が聞いた。
「かなり楽になったようです。ただ・・・。」
お迎えの人は、言いにくそうだ。
「なんか、問題があったのですか?」
ごるご君が聞く。
「いえ、待合室で待つ人が多くなりすぎているのが少し問題になっているようです。」
「それでは、待合室に連れていって。」
ごるご君は、新たな改革が必要だと思いながら言った。
セキュリティゲートを抜けて、ごるご君は待合室に入った。
麻薬捜査犬が、ごるご君の近くにきて匂いを確認している。
「太郎さんの匂いは、にんにく臭いだろうな。」
心の中で、ごるご君は思った。
待合室では、死神さんが次々に客をさばいていた。
死神さんと、事務室の職員が対応しているが、待っている人が多すぎるようだ。
「死神さん!」
ごるご君は、死神に呼びかけた。
「ごるご君、お久しぶりです。」
死神は、深々と頭を下げた。
「忙しそうだね。」
ごるご君は、微笑んだ。
「おかげさまで。」
死神も愛想笑いを浮かべる。
「ところで死神さん、お迎えの人って、重労働でしょ?」
ごるご君は言った。
「そうですね。若い人が募集してくれたらいいのですが、最近は高齢者が増えて、きつい仕事になっているようです。それでも働かなければならない人も多くいます。」
「そうだよね。そこで少し提案があるんだけど。」
ごるご君は、いじわるそうな顔をして言った。
「なにか、方法があるのですか?このままだと年金の受給以上に霊体の受け入れが困難になりそうだと先日の会議でも討議していたことです。」
死神は、言った。
「ちょっと、こっちに来て。」
ごるご君は、死神の黒い衣装の袖をひっぱる。
死神は、大鎌を奪われないように隠しながら、ごるご君について行く。
入ってきたセキュリティゲートから出ることはできなくなっていた。たまに逃亡しようとする人が、いるらしい。通用口というものがある。手前に警備室みたいな部屋がある。扉の前には警備の人間が7人ほど立っている。死神が、外に出るための手続きをしている。すぐに手続きは終わったようだ。
「前に比べると面倒になったね。」
「閻魔大王様との面談の前に逃げ出したヤツがいて、捕まえるまでに3日もかかってしまいました。セキュリティゲート側の扉は、逆方向には行けないように加工しました。でも、私や、お迎えの人たちは、外に出る必要があるので、通用口を作りました。基本的には事前に手続きをしておかないと、通れないようになっています。」
「無理に通ろうとしたら、どうなるの。」
「地獄行きの終身刑です。」
死神は、遠い目をして言った。
F22ラプターを駐機している所まで死神をひっぱって来た、ごるご君は、積んでおいた、産業用ドローンを取り出した。
「何ですか?これは?」
死神は、初めて見るドローンを不思議そうに見ている。
「これは、ドローンだよ。ちょっと待ってて。」
ごるご君は、すばやくドローンを組み立てる。そして送信機を操った。
ドローンは、小さな音をたてて浮上する。
「これは?何をするものですか?」
死神は、不思議そうに聞く。
「下の世界では、ドローンで宅配便の荷物を運ぶことも実施されている。これを使えば、お迎えの人の人数は半分にできるよ。」
ごるご君は、得意そうに言った。
「1機で、約30kgの重さのものを運ぶことができる。一般の人の体重だったら、これが2機か3機あれば十分に運べる。GPSも搭載しているので位置の情報さえ入力してあげれば、無人でもここまで連れてくることができる。」
「えっ、そんなことができるのですか?」
死神は不思議そうに見つめている。
「まあ、最初は人が管理したほうがいいから、迎えの人を2人ぐらいと、このドローンを2機ぐらいで実験したらいいんじゃない。うまくできるようなら、お迎えの人は1人にして、ドローンは体の大きさに合わせて数を決めて飛ばせばいいと思うよ。」
「そうですか?」
死神さんはまだ実感がわかないようだ。
そこに緊急放送が流れた。
「お迎えCチームさん、お迎えCチームさん。豊島区の佐藤さんのお迎えに向かってください。」
死神の前に、お迎えCチームが湧き出るように現れた。
「ちょうどいいじゃん。死神さん。」
ごるご君が言った。
「今回は、2人とドローン3機で行ってみようよ。僕も行くから。」
「お迎えは、5人で行くものと決まっているのですが。」
死神さんは、困惑したように言う。
「何事もチャレンジだって。君と君、一緒に来て。」
そう言って、ごるご君は2人だけを連れて、お迎えに出かけた。
迎える人の素性がわからないので、3機のドローンを持って行った。
豊島区に到着すると、お年を召したご婦人が、お迎えを待っていた。
ごるご君は素早く2機のドローンを装備した。
送信機を、うまく使う。
一緒に来たお迎えの2人は、びっくりしている。
ごるご君の操縦で、ドローンは簡単に上空に向かう。
迎えられる、ご婦人は、「こんなに快適な旅なのですね。」と感想をもらした。
ネロとパトラッシュが天使に囲まれて昇天するかのように、ドローンは揺れることもなく、上空に上がっていく。
「太郎さんが行き先を入力したら、GPSが簡単に目的地まで運んでくれるようになるよ。」
ごるご君の言葉に、2人のお迎えの人も感動している。
「これまで重いと思いながら働いていたのですが、ほとんど力は使わなくても大丈夫ですね。」
お迎えの人は、ドローンを使うことに賛成のようだ。
以前に太郎さんが、ごるご君の頭を持って、5人のお迎えの人が上の世界まで、ごるご君を運んだときには、何度か、ごるご君の頭は下に向けられてしまったが、ドローンを使った昇天では、そのようなこともなかった。惜しまれながらではあるが、間もなく昇天は終わった。
お年を召したご婦人は、上の世界に着くと、「ありがとうございました。」と言って、お迎えの人の案内で、セキュリティゲートに向かって歩いて行った。
「どう?見てた?」
ごるご君は、死神に聞いた。
「すばらしい。」
死神さんは感動しているようだ。
「10機ほど買ってきたから、上手く使って。きっと太郎さんなら位置情報を正確に入力できると思うので、うまく活用できると思うよ。」
「ごるご君、ありがとうございます。」
お迎えの人々が口をそろえて言った。
「これ、払って。」
きびしい口調になった、ごるご君が死神に向かって言った。
手渡した領収書には、5,000万円と書かれてある。
「今ですか?」
死神さんが困ったように言う。
「後でもいいけど、遅くなればなるほど金利がつくから、早く払ったほうがいいと思うよ。」
ごるご君は、静かに言った。
「わかりました。」
死神さんは、消え入りそうな声で言った。
「追加購入が必要だったら、1機あたり700万円で売ってあげるから。今回は、まとまっているので特別価格だよ。」
恩着せがましく、ごるご君は言った。
「ありごとうございます。」
こうして、ごるご君は上の世界の仕事を、またひとつ改革したのであった。
「太郎さん、位置入力をよろしく。1度入力すれば繰り返しの仕事になるので楽になると思うよ。」
ごるご君は、太郎さんに向かって言った。
「ごるご君、ありがとう。」
太郎さんは、うるうるしている。
「特殊作業なので、給料いっぱいもらってね。死神には、僕からも言っておくから。」
近くにいる死神は、何も言えない。
ごるご君は、死神の近くに行って、何やら言っている。
太郎さんの給料について話した後で、携帯の番号も聞き出した。
そして、太郎さんの携帯の番号も聞いた。
「もし、死神が給料を出し渋ったら、飛んで来るから。いつでも連絡して。」
「それじゃ、明日はアルバイトがあるから、そろそろ帰ります。」
そう言って、ごるご君は、F22に乗りこんだ。
座っている本体を押しのけるようにして、操縦席に座る。
狭いが仕方ない、本体を置いて帰るわけには、いかない。
次からは、時間かかるけど、ヘリで来ることにしよう。
ごるご君は思った。
みんなが手を振っている。
エンジンを起動させた、ごるご君は、手を振ってから離陸しはじめた。
滑走距離が足りない。
発進して、すぐに真下に落ちていく感覚だった。
すぐに機体を立て直した、ごるご君は、レーダーとGPSを駆使して自宅に向かった。
数分後には、アパートに到着した。
何か、忘れているような気がする。
「太郎さんが、いなくなったからかな。」
漠然と思った。
1週間後、アルバイトの給料日だった。
ふと、思い出す。
5,000万円忘れた!
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