ごるご君 働き方改革 死神のセキュリティチェック - にゃん吉一代記
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ごるご君 働き方改革 死神のセキュリティチェック



この物語は、フィクションです。
実在や仮想の人物、団体、企業等とは何ら関わりはございません。





 いつものように東急ストアのアルバイトを終えた、ごるご君は早めに寝た。
梅雨時期は寝苦しい、ごるご君のアパートは、古い。ノー気密、ノー断熱だ。
朝と夕とで外と変わらない気温差だ。

 夜中に何かの気配で目が覚めた。
気配はあるが姿は見えない!。「危険だ。」スナイパーの本能が騒ぐ。
突然、身体を持ち上げられる。下を見ると、眠っている、ごるご君が見える。
「まずい!」ごるご君は、精一杯抵抗しようとしたを。しかし無言の力は抗うことを許さない。
だが、頭の付近を持ち上げている奴の力は時に緩くなる。それで下が見えるのだ。
他の所を持ち上げているやつらの気配は、静かなのだが、頭を持っているやつの気配は、肩で息をしている気配だ。

 数分後だろうか、短い時間か長い時間かわからない。ずいぶん高い所まで連れて来られた。
たまに見える街並みは、はるか下だ。
ごるご君の身体を持ち上げていたやつらの姿が薄ぼんやりと人の形になってきた。
やつらは、ごるご君をふわふわとした地面に下ろすと、少し高いところにいる大きな鎌を持ったやつの所に集まっていく。
5人だったようだ。4人は、シャキシャキ歩いているのだが、1人だけフラフラしながら、やっと4人の後について歩いている、じいさんがいる。「やつが頭を持っていたやつだ。」ごるご君は、直感した。
5人は、大鎌を持ったやつから何かもらっている。気になったごるご君は、近づいてみた。
何か封筒を受け取っている。最後に封筒を受け取った、くだんのじいさんの手から封筒が地面に落ちた。
ごるご君は、封筒を拾ってやって、じいさんに渡しながら封筒に書かれた文字を見た。
【アルバイト料】と書かれてあった。
大鎌を持った男は、5人の中のリーダー格の男に別の書類を手渡して何やら指示をしているようだ。
短い指示が終わるとリーダー格の男は、4人にアイコンタクトを送った。
ふっと5人の姿が、ふわふわとした地中に消えていく。
みんな消えたと思ったのだが例のじいさんの首から上が地上に残っている。
「面倒なやつだ。」そう言いながら、大鎌を持った男は、手でじいさんの頭を地中に押し込む。
じいさんの姿が消えて地上には、ごるご君と大鎌を持った男が残った。

 「こんばんは、ここはどこですか?」ごるご君が、男に話しかけた。
「ここは冥府の入り口じゃ。私は死神。」
「僕は、どうしたのですか。」
「君は死んだ。ごるご君。」
「なぜ?病気もしていなかったのに。」
「最近は上の世界にも、いろいろと事情があってな。こちらでは下の世界以上に高齢化が進んでいる。そこで、元気そうな若い者も連れてこようということになった。」
「それでは、僕は殺されたのですか?」
「そうではない。突然死じゃ。」
「死因は何になるのですか?」
「それは、告知できない、守秘義務じゃ。最近は、個人情報の扱いには気をつけないと足下をすくわれる。人を信じ過ぎてはいけない、信じる者は足下をすくわれる。」
どうやら、ごるご君は、突然死させられたらしい。死因も教えてくれないとは、この男は怪しい。後で倉石さんに聞きに行こう。ごるご君は思った。

「僕はこれから、どうすればいいのですか?」
「その先に、建物が見えるじゃろう。まず、そこに行って閻魔大王と面接じゃ。」
死神は続けた。「その前に・・・。」
死神が、ごるご君の背後に回ろうとしたとたんに、ごるご君の回し蹴りが死神のテンプルにヒットした。
「俺の背後に立つな!」するどい口調で、ごるご君は言った。


「わしは、閻魔大王に会う者のセキュリティチェックをしなければならない。君も例外ではない。」
「どうしても、断る。」
強い口調で、ごるご君が言った。
「それでは、無理にでも調べることになるぞ。」
そう言いながら、再度、死神は、ごるご君の背後に回ろうとした。

「くどい!」
ごるご君は、死神を組み伏せて、死神が持っていた大鎌を取り上げた。

「それを取られると、魂の尾が切れなくなる。返してくれ。」死神が言った。
「人にものを頼むのに、その態度はなんだ。」ごるご君が言い返す。

「お願いです、鎌を返してください。」泣きそうな声で死神は懇願した。
「これで、僕の魂の尾も切ろうとしているのか?」
「いえいえ、これは聞き分けのない者を脅すためのものです。ごるご君の魂の尾を切るなんて、ありえません。」
「二度と僕の背後に近づかないなら、返してやる。」
「それでは、セキュリティチェックができませぬ。少しでいいので、チェックさせてください。」

ごるご君は、死神が哀れに思えてきた。
「何か、あったの?」
ごるご君が聞くと、死神は、せきを切ったように話し始めた。

「これまで、私は2000年以上、ここで死神として働いています。これまでは、この世界に上がってくる人間は、みんな素直で従順でした。私は、150年ほど前までは、最優秀死神賞を連続で受賞するほど、真面目に働いてきました。ところが最近の死んだ奴らときたら、閻魔大王様との面接の最中に刃傷沙汰を起こしたり、雑談したりダンスを踊ったりと、やりたい放題です。先日は、閻魔大王様との面接中に自爆テロを起こすやつまで現れました。幸い、閻魔大王様は、髭を焦がしただけで無事だったのですが、私はセキュリティチェックが甘いと、おおいに叱られました。」
「この先は、どんなん流れになっている?なにか知恵を貸してあげようか。」
ごるご君が言った。普段なら、かかわりあいになりたくない手合だが、ちょっとかわいそうだ。
それに、死神に恩をうっておくと、先々、いいことがあるかもしれない。
あの世では、打算的な一面も芽生えた、ごるご君だ。

「その前に、大鎌を返してもらえませんか?」
死神が小さな声で言ったが、この鎌には秘密がありそうだ。
「後で、考えるから、先に案内しろ。」
横柄に、ごるご君は言った。

「それでは、こちらにどうぞ。」
死神が建物に向かって歩き始める。
ごるご君も大鎌を持って続いて歩いた。

 建物は意外に大きい。
入口には冥府と書かれてある。
鎌倉ものがたりで、単コロが到着したのは、「黄泉(よみ)」だったと思うが、いろいろな言い方があるのだろう。
死神が重そうな戸を開いて中に入る、ごるご君も続く。
短い廊下の先に、もうひとつ扉がある。
廊下は、間口2m弱、奥行6mほど。ごるご君は、間取りをメモしている。

 廊下の奥にも扉がある。
死神は、その扉も開いて中に入る。
そこは待合室であった。
不安そうな顔をした人が数人、力なくベンチに座っている。
入口の近くの角には、喫煙所が設けられているが、中には、誰もいないようだ。
「タバコくれ。」ごるご君が、死神に炒った。
死神は、ポケットをゴソゴソと探って細長い箱を取り出した。『日本香堂 毎日香』と書かれてある。喫煙所に入ってみると、線香立が中央にあった。中には、自動販売機もあったが、お線香しか売られていない。
ごるご君は、すぐに喫煙所を後にした。

 待合室の奥に係員の詰所のようなものがあり、隣に小さな扉がある。
詰所の中には、看護師のような白衣を着た人がいる。「〇〇居士さん、入ってください。」白衣を着た人が言った。返事する人はいない、「〇〇さん、〇〇さん。」と呼ばれると一人の男が、ベンチから力なく立ち上がった。「これからは戒名で呼ばれるので慣れてくださいね。」白衣の人が言うと、「なかなか慣れませんね。」と、男は、言った。「こちらです。」白衣の人は、奥の扉を開けて、男を中に入れた。
「奥の部屋が、閻魔大王様との面接ルームになっています。面接が終わると、三途の川の渡し船乗って、それぞれの行き場所に行くことになります。」死神が、説明した。「つまり、あの部屋に入るまでに危険物を取り上げればいいわけだ。」ごるご君の言葉に死神が頷いた。

「最初の廊下に、金属探知器を取り付ければいいじゃん。」「2列にして、片側は持ち物検査のコンベアにすれば、セキュリティチェックは、簡単に終わるよ。」ごるご君は簡単に言った。
死神の頭の上には、クエッションマークが並んでいる。
「それは、どんなものですか?」
「空港にあるやつ。見たことないの?」
「空港とはなんでしょうか?下界のものは、1500年ぐらい前から見ていません。死神に昇格してからは、お迎えにも行かなくなったし。」
「そうか、困ったやつだ。」ごるご君は、ため息をついた。
「お迎えのやつらって重いもの運べる?」ごるご君が聞くと、「何チームか集めれば、少々重いものなら運べると思います。」死神が、答えた。
「それでは、どこかの空港に、行ってセキュリティゲートをもらってこよう。」

 ごるご君は、お迎え隊10チーム、50人を引き連れて、成田空港に行った。
国内線のターミナルに音をたてずに侵入する。音をたてたくても、たてられないし気配を消すことには慣れている集団だ。盗賊団より楽にどこにでも出没できる。半分幽霊のような存在だから簡単だ。
ごるご君の指示で、セキュリティゲートのコンベアと金属探知器はすぐに外された。
「ついでに、あれも何本かもらっておこう。」ハンディタイプの金属探知器も、10本ほど持って行くことにした。
「さて、行こうか。」ごるご君の命令で、全員が動くが、ゲートとコンベアは重すぎる。「これは、無理です。あの世までは、とても運べません。途中まで浮けば何とかなりそうですが。」役に立たない連中だ。しかし、金属探知器を持って帰らないと、はるばる下界まで来た意味がない。
「仕方がない。そのへんにあるパレットにゲートと、コンベアを乗せておけ。そして滑走路の目立たない所に、置いておけ。」そう言うと、ごるご君は、外に出てタクシーを拾った。
 「こんな時間に珍しい、お客様ですね。どこまで行きましょうか。」
タクシーの運転手さんが言う。
「都内の〇〇に行ってください。」
ごるご君は、自分のアパートの住所を言った。
「高速使っていいですか?」
運転手さんの問いかけに、「どんなルートでもいいので、できるだけ早く到着してください。」と、言った。
「かなり、料金かかりますが。」運転手さんが心配そうに言うので、ごるご君は死神から奪ってきた財布を、運転手さんに渡した。
5万円以上はある。
「わかりました。任せてください。」
タクシーは喜々として走りはじめた。すぐに高速に乗る。
「少し飛ばします。」
そう言って、スピードをどんどんあげる。けっこう早い。これなら早く着けそうだ。ごるご君は、ほっとした。
他の車もバスも、どんどん抜き去り、ごるご君の乗ったタクシーは、アパートに到着した。
「ありがとうございます。お釣りはいりません。」
そう言って、ごるご君はアパートの部屋に戻った。
布団を見ると、ごるご君が寝ている。でも、息はしていないようだ。
「AEDを使ったら、息吹き返すのかなー?」
漠然と思ったが、本人が、本人に使っているところは見たことがない。
今度、やってみようかな、と考えながら、キーボックスから、チヌークのキーを取り出す。
すぐに部屋を出て、外の空地にとめてある輸送ヘリのチヌークに乗り込んだ。
飛行の申請をしようかと思ったが、行き先がはっきりしないので、やめた。
エンジンを始動すると、すぐに飛び立った。全速で成田空港に向かう。
時々、無線に何か入ってくるが面倒なことになりそうなので相手にせずに飛び続けた。
すぐに成田空港に到着した。

 滑走路にヘリを降ろすと。地面から湧き出すように、50人のお迎えの人が現れた。
「荷造りはできています。」男の一人が言った。
「よし、それではワイヤーで吊り上げるぞ。」
「わかりました。」
やたらと手際がいい。
ごるご君が、一人の男に話しかけた。
「みんな、手際いいね。」
「この世にいる時に、荷物運びの仕事していたヤツが多いから。」
「そうか、頼もしいな。」
そう言っている間に、「ごるご君!準備できました。」と、声がした。
「よし、それでは出発だ。誰か、地理に詳しいヤツ、隣に乗ってくれ。」ごるご君は言った。
「それでは、私が乗りましょう。」
「よし、出発だ。」
ごるご君は、すばやく操縦席に乗り込んだ。
同乗の男は、もたもたと乗り込む。
ヘリは離陸した。
「さて、どっちの方向に飛べばいいのかな。」
ごるご君は、隣の男に話しかけた。横目で男の顔を見て、ごるご君は、ギョっとした。
「この男は、僕の頭を持って、あの世に連れてった人だ。」
男は、ゆっくりと言った。
「まっすぐ上。」
「了解。」ごるご君は、ヘリをまっすぐ上昇させた。
荷物の周りには、49人のお迎えの人がいる。
しかし、一般の人からは見えないようだ。
ヘリは上昇を続ける。
飛行機と違ってヘリの飛行できる高度は、高くない。4600mあたりが飛行限界だ。
それより先に人の飛行高度の限界が来る。空気が薄くなって酸素が足りなくなるのだ。

「そろそろ、高度の限界が近いぞ。」
酸素マスクの位置を確認しながら、ごるご君が言った。
「その角を右に曲がってください。」男が言う。
角と言われても、何も見えない。
「そこを右です。横断歩道があるから気をつけて。」
ごるご君は、言われるままに右に舵を切った。

「次も右です。標識があります。」
標識の所で右に曲がった。

「もう、見えてきました。」
ごるご君が目をこらして見ると、最初に連れてこられたあたりが、ぼんやりと見える。
次第に、はっきりしてくる。
死神がいるのもわかった。

「よし、着陸するぞ。」
ごるご君は、ゆっくりと着陸態勢に入った。

ゆっくりと機体を下ろしていく。
地面が、ふわふわしていたので心配していたのだが、まず荷物が無事に地上に到着した。
ワイヤーを離した機体は、荷物の近くにゆっくりと着陸する。
プロペラが巻き起こす風で、死神の衣服が揺れている。

「おかえりなさい。」
死神が駆け寄って出迎える。
「ただいま。」ごるご君はヘリから降りた。
49人のお迎えの人たちは、地面からにょろにょろと沸きだしてきた。

死神が言う。
「あの、そろそろ大鎌を返してもらえませんか?」
「あっ!」ごるご君は思い出した。
「ごめん、空港の入口に置いたまま忘れてきちゃった。」

「えっー!」
死神の顔が青ざめる。
「鎌をなくしたら、死神を首になってしまいます。」

「まあまあ、最近は拳銃をトイレに置き忘れる警官もいることだし。後で遺失物の届け出せよ。」

死神は、心なしかふらふらしながら、少し間をおいて言った。
「あの、私の財布は返してもらえますよね。」

「ああ、財布ね。急いでいたので財布ごとタクシーの運転手さんに渡した。」
何事もなかったかのように、ごるご君は言った。

「中身もですか?」
死神は、もはや死体になっている。
「中も外も全部だよ。」
ごるご君は、もはや悪びれることもない。

「財布の中には、クレジットカードも、キャッシュカードも、彼女の写真も入っていたし、死神クラブの会員証も入っていたのに。」
死神は、その場にへたりこんでしまった。
「これまで一生懸命がんばってきたのに、退職金も年金も貰えなくなるかもしれない。」

「年金あっても、2000万ぐらいは貯めておかないと苦しいらしいよ。」
ごるご君は、他人事のように言った。

「さて、セキュリティゲートの取り付けにかかろう。」
ごるご君は、お迎えの人たちに言った。
お迎えの人の中の一人が言う。
「私は生前は、CEIAに勤めていました。金属探知機の設置ならまかせてください。廊下に設置すればいいのですね。ごるご君は、見ているだけで大丈夫です。」
その男は、そう言うと皆に指示を出して、てきぱきと仕事を進めていく。
あれよあれよと言う間に、セキュリティゲートも、コンベアも組みあがった。
「さすが成田空港、いいものを使っている。」
男がつぶやいた。

「さて、試してみよう。」
お迎えの人々がセキュリティゲートを通ってみることになった。
最初に反応したのは、ポケットの中に小銭を入れていた人だ。
出たところで、ハンディータイプの金属探知機で調べられてわかった。
家の鍵や、USBメモリーなど細かなものにも反応することがわかった。
さて、コンベアの荷物検査用の探知機は、オペレータが必要になる。
「こっちは、すぐには使えないなぁ。」
ごるご君が言うと、先ほどの男が言った。
「知り合いの元空港職員も何人かこちらの世界に来ているので声をかけてみます。彼らや彼女らなら機器の扱いにも慣れているので、すぐに稼動させられると思います。あと、出口のところに元警察官の者も何人か配備してテロにも備えるようにします。」

こうして、死神のセキュリティーチェックは機械化された。
「俺の背後に立とうとするヤツが、一人減った。」ごるご君は満足した。


「それじゃ、ヘリを戻しに帰るね。」
ごるご君は、ヘリに乗り込んだが、帰り道がわからない。

「悪いけど、誰か道案内してくれる?」
ごるご君が言うと、「それじゃ、私が。」と言って、例のじいさんがもたもたとヘリに乗ってきた。

「みんな、お元気で!」
ごるご君のヘリの周りには、お迎えの人々が集まってきている。
「ありがとう、ごるご君」皆が手を振っている。

名残惜しいが、離陸だ。
「さて、どう飛んだら帰れるのだ?そういえば、じいさんの名前聞いてなかったね。」
ごるご君が言った。
「私は、太郎です。少し上昇したら左に向かって飛んでください。」
「僕は、ごるご君、太郎さんよろしく。」
そう言いながら、左に向かって飛ぶ。
前方に、アドバルーンが見えたら下降してください。
「了解。」
すぐにアドバルーンが目に入った。
ヘリは下降しはじめる。
「まっすぐ下降してください。」

1分もたたない内に地面が見えてきた。
そこは、ごるご君のアパート上空だった。

着陸態勢に入った。
すぐに、機体はスムースにアパートの前の空き地に着陸した。

「太郎さん、お茶でも飲んでいく?」
ごるご君は、太郎さんを部屋に招きいれた。
「狭いところだけど、入ってください。」
布団には、魂の抜けた、ごるご君が寝ている。
「狭くてごめんね。」
冷蔵庫から、サントリー烏龍茶のペットボトル500mlを出して、太郎さんに渡した。

「1時間だけ、横になっていい?ちょっと疲れた。」
「どうぞ、気にしないで休んでください。」

ごるご君は、自分が寝ている布団に横になった。
シングルの布団に二人並ぶと狭い。
二人と言うべきかどうかわからない。




何時間経っただろう。
ごるご君は、目覚めた。
太郎さんは消えていた。


「さて。」
起き上がると、隣に自分は、いない。
「あれ?」
ごるご君は自分の手をつねってみた。
痛い!
「あれは夢だったのだろうか?」


時計を見ると、午前4時だ。
東急ストアのアルバイトは今日は夕方からなので、まだ寝る時間はある。
再び、ごるご君は横になった。

次は、お腹が減って、目覚めた。
テレビをつけると、成田空港でセキュリティーゲートが忽然と消えたと報道されている。
足跡も他の痕跡も残っていないとのことだ。
唯一の手がかりは、大きな鎌が入口に残されていたことだと言っている。

「やっぱり、あれは現実だったのか。」
「まあ、いいや。ごはん食べよう。」
そう言いながら、テーブルの上を見ると、サントリー烏龍茶500mlのペットボトルが、テーブルの上にある。


流しの前に立った、ごるご君。
ふと、背後に異様な気配を感じた。
「俺の背後に立つな!」
振り返った、ごるご君の目の前に太郎の顔がある。

「太郎さん、なんでここにいるの?」
ごるご君が聞いた。
「実は、あの世に帰ろうと思ったのですが、浮き上がることができなくて。いつもは誰かと一緒なのでひっぱられるようにして浮かぶのですが。」
「それじゃ、だれかに迎えにきてもらえばいいじゃん。」
「たぶん100年以内には来てくれると思います。」
ごるご君は、どっと疲れた。

「それじゃ、これから太郎さんは、どうやって過ごすの?」
「はい、しばらく、ごるご君の背後霊になって、ごるご君を見守ります。」

「俺の背後に立つな!」

するどい回し蹴りは、むなしく空を切る。






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