金正男は生きている 16 - にゃん吉一代記
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金正男は生きている 16



※この物語はフィクションです。実在の人物、国家、団体、企業等には何ら関係はございません。

金正男は生きている
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実行

夕方、ごるご君は澄子と落ち合った。
そして、昨夜泊まったホテルに帰った。
「空港は、ものものしいわね。」
澄子が言った。
「昨日より、騒がしくなっていますか?」
「そうね、人は、増えているわ。」

「金さんを呼ぶのはいいけど、空港から出たあとで姿をくらませてもらうのは難しそうね。」
「車で移動してもいいけど、イレギュラーなことが起きると対応できないかもしれません。この国の運転マナーは、かなり悪い。」
「安全なのは電車だけど、目立つと困るわね。どうしましょうか。」

「もう、一日空港のあたりを探りながら、考えましょう。」
「そうね、そのほうが間違いないわね。早く金さんに来てほしいけど今のままでは危険だわ。」

澄子は、奈々に電話をかけた。短い会話だった。

「金さんは、真剣にダイエットしているらしいわ。別人のようにスリムになったそうよ。」
「それは、よかった。少しは敵の目もくらませることができますね。」
ごるご君は、笑った。



翌日、朝食の後にごるご君と澄子は、揃って空港に出かけた。
二人とも、イタリア人っぽい変装をした。
移動は、目立たないように電車だ。
2017年2月13日のことだ。

格安空港専用カウンター前、恰幅のいい男が歩いてきた。
「金さんに似ていますね。」小さな声で、ごるご君が言った。
「どこかの組織の囮かもしれないわね。」澄子も、小さな声でうなづく。

その瞬間のことだった、
若い女性が二人、その男に近づいた。
そして、一瞬の間に男に危害を加えて去っていった。

「あら、実行しちゃった人がいるわ。」呆れたように澄子が言った。
「何が起きたのですか?」ごるご君が聞く。
「たぶん、大騒ぎになるわよ。私たちは、帰りましょう。」
二人は、荷物をホテルに残したままだが、それにかまわず北京に向かう飛行機のチケットを買った。
澄子は、ぬかりない。いつでも出国できるように、パスポートとビザは自分たちの変装に合わせたものを準備している。

飛行機に搭乗する直前に、澄子は奈々にメールを送った。
金さんのダイエット後の写真と奈々の写真を、温州の空港の指示するところへ、すぐに届けるように伝えた。
温州の偽造パスポートセンターにも連絡を入れる。あらかじめ、用意するように伝えてあったので、写真さえあれば、すぐに金さんと奈々の偽造パスポートと、ビザはできあがることであろう。
そして、奈々はゴルゴ十三(じゅうそう)にも連絡をした。
クアラルンプールでの暗殺騒ぎの、ごたごたに乗じて、金さんを日本に入国させる連絡だ。
予想外の展開で、澄子は急に忙しくなった。
飛行機に乗ってしまえば休めるが、外部との連絡は取れなくなる。
飛行機に搭乗する前に、できるだけのことをしなければ、ならなかった。

18:00。
ごるご君と澄子を乗せたマレーシア航空のジェット機は、クアラルンプール空港を飛び立つ。
空港内は、ごったがえしているが、すでに搭乗手続きを済ませた旅客には、何の影響もなかった。
「6時間あまりで、北京に着くわ。きっと、金さんと奈々さんも北京にきているはずよ。」
澄子が楽しそうに言った。
「無事に空港に来られるといいですね。」心配そうに、ごるご君は言う。
「奈々さんのことだから、ぬかりはないと思うわ。クアラルンプール空港の騒ぎは知っているはずだから。金さんが運転手の陳さんに変装して車を運転して空港に行くのじゃないかしら。そして、トランクに隠れていた陳さんが、帰りの車を運転して帰るかもね。」
澄子は、あまり心配していないようだ。
こんな時、いつも心配性の、ごるご君は不安になるのだが、それは口に出さないことにした。
この飛行機は、6時間ほど後には北京に到着する。それまで、何かをやろうとしても、空の上では何もできない。それなら、あれこれ考えるより、結果を待つほうが楽だ。澄子の悟ったような行動は、これまでの豊富な経験の賜物だろう。何かをできる時には、てきぱきと行動するが、何もできない時に、何かをやろうとはしない。しかし、それは、あきらめなどではないのだ。

6時間後、飛行機は北京に到着した。
深夜なので、人は少ない。
「コーヒーでも、飲みましょうか?」澄子が言う。
機内では、あまり眠ることもできなかった、ごるご君だが、目はさえている。
「苦いコーヒーを飲みたいです。」
「いつも、砂糖をいっぱい入れるのに?」澄子が、からかうように言った。

コーヒーショップに入ると、澄子はスマホの電源を入れた。
スマホのディスプレイを確認して、うれしそうにしている。
「奈々さんからですか?」
ごるご君が聞くと、「そうよ。」と答える。
「内容は?」ごるご君が聞いたが、「内緒。」とだけ言う。

コーヒーがテーブルに置かれた。
ごるご君も、澄子もコーヒーを味わった。
少し、落ち着いた気がした。
「さて、出ましょうか。」
澄子が言う。
「はい。」
伝票を持った、澄子に続いて、コーヒーショップを出た。

「搭乗手続きをしてくるわね。そこで待ってて。」澄子は、ごるご君を残して、搭乗手続きに向かった。

「おまたせ。」
澄子は、ごるご君に飛行機のチケットを渡した。
パキスタン国際航空、成田行きのチケットだ。

「まだまだ時間があるから、ソファーで休みましょ。」澄子が言う。
「そうしましょう。」ごるご君も賛成した。
旅行客が、ぽつりぽつりといるが、長いソファーに横になっても、誰も困らない程度だ。
ごるご君は、ソファーに横になった。
目が冴えているはずだったが、いつの間にか、うとうととしていた。

「飛行機に乗るわよ。」
澄子の声で目が覚めた。時計を見ると、7時を過ぎている。
「顔を洗ってらっしゃい、終わったら、搭乗手続きよ。」
ふらふらしながら、ごるご君はレストルームで顔を洗った。
レストルームを出ると、澄子に手を引かれるようにして搭乗手続きをした。

そして、すぐに飛行機に乗り込んだ。
「ハロー。」隣の、ご婦人が話しかけてきた。どこかで聞いたことのある声だ。
「グッドモーニング。」ご婦人の隣の男性の声にも聞き覚えがある。
澄子は、笑顔で会釈している。

「金さんと奈々さん。」ごるご君は、やっと気がついたが声には出さなかった。

午後1時前。
パキスタン国際航空のジェット機は、成田空港に着陸した。
そして、4人とも何事もなく入国の手続きを済ませた。

空港ロビー。
「ごるご君、無事に日本に連れてきてくれてありがとう。」金さんが言う。
「自分は、何もしていませんから。」高倉健さんのような口調でごるご君が答える。
「これは、今回の仕事の謝礼です。」
金さんは、ごるご君に、封筒を渡す。
「これは、受け取れません。」
「マレーシアにも行ってもらったし、経費もかかっているいるでしょう。受け取っていただかないと困ります。」奈々が言った。
「もらっておきなさい。」澄子が言う。
「そうですか、それでは遠慮なくいただきます。」ごるご君は金さんからもらった封筒を内ポケットに入れた。

金さんと奈々さんは、澄子と」一緒に、まずは、ゴルゴ十三(じゅうそう)の家に行くことになった。
ごるご君は、三人と成田空港で別れた。
明日からは、また、東急ストアーでアルバイトが待っている。

アパートに着いた。
ずいぶん長く留守にしていた気分だ。
ジャケットを脱いだ、ごるご君は、内ポケットに入った、金さんの謝礼を思い出した。
小切手が入っていた。
スイス銀行の小切手だ。
額面は、1,000,000だ。
100万円か、まあ、ほとんど何もしていないし。ごるご君は、額面にほっとした。

しかし、よく見てみると、『円』ではなかった。
1,000,000は、『米弗』であった。





本章終了。

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