石川啄木 ローマ字日記 明治42年4月9日 - にゃん吉一代記
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石川啄木 ローマ字日記 明治42年4月9日



啄木のローマ字日記だ。
過去の2日間の日記で気がついたが、ローマ字とはいえ現在とは違った表現が多く見られる。そのまま書くと逆の意味に思える表現もあって難しい。歌人である啄木は小説の表現の中やエッセイでも韻を感じさせる表現をすることもある。ローマ字日記とはいっても、意図的に一般的ではない表現をしたかもしれない。







9 TH,  FRIDAY.

9日(金曜日)

 Sakura wa ku-bu no Saki : atataka na, odayaka na, mattaku Haru rasii Hi de, Sora wa tôku Hana-gumori ni kasunda.

 桜は九分の咲き。あたたかな穏やかな全く春らしい日で空は遠くはなぐもりにかすんだ。


 Ototoi kita toki wa nan to mo omowanakatta Tie-ko san no Hagaki wo mite iru to, naze ka tamaranai hodo koisiku natte kita.  ' Hito no Tuma ni naranu mae ni, tatta iti-do de ii kara aitai ! '  Sô omotta.

 一昨日、来たときは何とも思わなかった、ちえこさんの葉書を見ていると、なぜか堪らないほど恋しくなってきた。人の妻にならぬ前に、たった一度でいいから会いたい。そう思った。

 Tie-ko san !  nan to ii Namae darô!  Ano sitoyaka na, sosite karoyaka na, ika ni mo wakai Onna rasii Aruki-buri !  Sawayaka na Koe !  Hutari no Hanasi wo sita no wa tatta ni-do da.  Iti-do wa Ôtake Kôtyô no Uti de, Yo ga Kaisyoku-negai wo motte itta toki : iti-do wa Yatigasira no, ano Ebi-iro no Madokake no kakatta Mado no aru Heya de------ sô da, Yo ga " Akogare " wo motte itta toki da. Dotira mo Hakodate de no koto da.

 ちえこさん。なんといい名前だろう。あのしとやかな、そして軽やかないかにも若い女らしい歩きぶり!爽やかな声!二人の話をしたのは、たった二度だ。一度は、おおたけ校長の家で、余が解職願いを持っていった時、一度は谷地頭のあのえび色の窓掛けのかかった窓のある部屋で---そうだ、余が『あこがれ』を持っていった時だ。どちらも函館でのことだ。

 Ah ! Wakarete kara mô 20 ka-getu ni naru !

 ああ、別れてからもう20ヶ月になる!


 Sakuya no koto wo Kindaiti-kun ni hanasite simatta.  Muron sono tame ni Tomo no Kokoro ni okotta Teikiatu wa I niti ya 2ka de kie mai.  Kyô iti-niti nan da ka Genki ga nakatta. To itte, Tomo wa betu ni Okiyo ni Koi siteru wake de wa muron nai.  Ga, Yo no yô ni kono koto wo omosirogari wa sinakatta no wa Jijitu da.  Otoko wa Wakazono to yû Yatu na koto wa sugu sireta.  Kare wa Yoru 9 ji goro ni natte tatte itta.  Okiyo to no Wakare no Kotoba wa Kindaiti-kun to tomo ni kono Heya ni ite kiita.  Sono moyô dewa, nan de mo Watanabe to yû Sei no Otoko to no Hariai kara, hitori nokotte Okiyo wo Te ni ireru kessin wo sita mono rasii.  Otoko no tatta ato, Onna wa sugu Hana-uta wo utai nagara tati-hataraite ita.

 昨夜のことは金田一君に話してしまった。むろん、そのために友の心に起こった低気圧は1日や2日で消えまい。今日一日なんだか元気がなかった。といって、友は別におきよに恋しているわけでは、むろんないが、余のようにこのことを、おもしろがりはしなかったのは事実だ。男はわかぞのというヤツなことは、すぐ知れた。彼は夜9時頃になって発っていった。おきよとの別れの言葉は金田一君とともに、この部屋に居て聞いた。その模様では、なんでもわたなべという姓の男とのはりあいから一人残って、おきよを手に入れる決心をしたものらしい。男の発った後、女はすぐ鼻歌を歌いながら、立ち働いていた。


 Sya de wa Kyô Dai-ippan ga hayaku sunde, 5ji-goro ni kaette kita. Yoru, detakute tamaranu no wo muri ni osaete mita.

 社では今日、第一版が早く済んで、5時頃に帰ってきた。夜、出たくてたまらないのを無理におさえてみた。

 Kaeri no Densha no Naka de, Kyonen no Haru wakareta mama ni awanu Kyô-ko ni, yoku nita Kodomo wo mita.  Gomu-dama no Hue wo ' pi-i ' to narasite wa Yo no hô wo mite, hadukasi-ge ni waratte Kao wo kakusi-kakusi sita.  Yo wa daite yari tai hodo kaaiku omotta.  Sono Ko no Haha na Hito wa, mata, sono Kao no Katati ga, Yo no oitaru Haha no wakakatta koro wa tabun konna datta rô to omowareru hodo, Hana, Hô, Me ........... Kao ittai ga nite ita. Sosite, amari Jôhin na Kao de wa nakatta !

 帰りの電車の中で、去年の春、別れたままで会わぬ、きょうこに良く似たこどもを見た。ゴムたまの笛をピーッと鳴らしては余のほうを見て恥ずかしげに笑って顔を隠し隠しした。余はだいてやりたいほど、可愛く思った。その子の母な人は、また、その顔の形が余の老いたる母の若かった頃は、たぶん、こんなだったろうと思われるほど、鼻、頬、目----顔いったいが似ていた。あまり上品な顔ではなかった。

 Titi no yô ni amai Haru no Yo da !  Kusiro no Koyakko --------Tubo Jin-ko kara natukasii Tegami ga kita.

ちちのように甘い春の夜だ!釧路の小奴------坪ジン子から懐かしい手紙が来た。


 Tôku de Kawadu no Koe ga suru.  Ah, Hatu-Kawadu ! Kawadu no Koe de omoidasu no wa, 5 nen mae no Ozaki Sensei no Sinagawa no Uti no Niwa, sore kara, ima wa Kunohe no Kaigan ni iru Hotta Hide-ko san !

 遠くで蛙の声がする。ああ初蛙!蛙の声で思い出すのは5年前のおざき先生の品川の家の庭、それから今は九戸の海岸に居るほったひでこさん!


 Makura no Ue de Kongetu no " Tyûô-kôron " no Syôsetu wo yomu.

 枕の上で今月の中央公論の小説を読む。









今回の日記は、比較的短かったが、それでも読むのに時間がかかる。
これを書くには、かなり時間がかかっていたものだろうと推察する。





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