2019年10月 - にゃん吉一代記
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ごるご君 働き方改革 あの世で、IT革命 その2



この物語はフィクションである。
わざわざ断りを入れる必要もないほどのフィクションである。実在の人物、団体、劇画または漫画、動画等や企業、神社仏閣、あの世とは全く関係ない。

ごるご君 働き方改革 死神のセキュリティチェック

ごるご君 働き方改革 うしろの 太郎

ごるご君 働き方改革 あの世で、IT革命 その1

このぐらいの文書になってくると、以前何を書いたか思い出せなくなる。長大な文章を操る小説家の人は偉大だ。




今回も、ひと通り死神と絡んだ、ごるご君だ。
死神の背に座ったまま、戸田さんに話しかける、ごるご君。
「すみません。仕事の実態を教えてもらえますか?太郎さんや銭形さんの話では、この部屋の仕事が他の部所と比べると滞りがちなようですが。」
戸田さんが、答える。
「そうですね。人数多がくないので、かなり仕事がたまることもあります。最近は死神様も職場環境の改善のために残業をしないように言ってくださいますが、この仕事は24時間年中無休なので、上がってまいる方が多い時は、しばらく処理ができないこともあります。そのせいで、手前の待合室に多くの人が待つことも。」
「やはり、伺ったとおりのようですね。ちょっと提案があるのですが、こちらを見てもらえますか。」
ごるご君は、戸田さんと仲野さんを手招きした。そして、スマホを取出して画面を開いた。仲野さんに作ってもらっているサンプルである。まだ作成途中だが、簡単な採点ぐらいはできるようになっていた。ごるご君はスマホを戸田さんに渡した。「使い方は、簡単です。入力欄に氏名を入れてください。そうすれば、その人の出生から現在までのデータを見ることができます。まだデータベースができていないので今は仮に『モリタゴウ』と入力してみてください。」戸田さんは、面白そうにスマホを見ながら、「もりたごう」と入力した。画面にいくつか候補が出てくる。「候補の中で漢字の名前が合っている人を選んでください。どこでもいいですよ。」仲野さんが説明する。「はい。」戸田さんは、「森田剛」を選んだ。画面には、同じ名前の人の候補が出る。3人だ。それぞれ下に生年月日が書かれている。「どれでもいいので選択してください。」仲野さんが言った。「じゃ、この人。」戸田さんは、昭和50年生まれの「森田剛」を選んだ。すると、画面に昭和50年○月○日生まれの森田剛さんの履歴が出る。「この評価と書かれているのは?」戸田さんが聞く。「選択してみてください。」仲野さんが言った。戸田さんは慣れた手付きで、クリックする。昭和50年生まれの森田剛さんの評価は、73点と出てきた。「これは総合評価です。項目別の評価は、そちらを選択してもらうと見ることができます。」ごるご君が得意そうに言った。「すごいです。これ。」戸田さんが驚いたように言った。いつの間にか、戸田さんも、ごるご君の隣に腰掛けている。「問題は、評価のポイントを合わさなければならないことと、データに現れてこない行いをどのように評価するかということです。」仲野さんが言った。「完全なカルテにはならないですが、予めこれらを知った上で、例の走馬灯ビデオを見るほうが仕事捗りませんか?」ごるご君が言った。「とても助かると思います。」戸田さんが言う。「私達が閻魔大王様にお渡しする通信簿も補助的なものです。最後は閻魔大王様が決めるのだから、あらかたの点数が出ていればいい。と、死神様がおっしゃってました。」
「そういえば。死神、さっきから静かだけど。」
ごるご君は、戸田さんと、一緒に死神の背中に座っていたことを思い出した。
「死神さ〜ん。生きてる?」
返事がない。
「息してるのか?」ごるご君は死神の鼻をつまんだ。
反応がない。
「やばい、息してない。」
ごるご君は、死神の背を離れて立ち上がった。
続いて、戸田さんが、ゆっくりと立つ。

「蘇生させないと。仲野さん、AED持ってきてください。戸田さんは、救急車の手配をお願いします。。」東急ストアのアルバイトの合間に消防署の研修を受けている、ごるご君だ。本業のスナイパーをやっている時に、間違って隣の人に弾が当たってしまった時のことも考えて、救命救急士の資格も取ろうとしている。
ごるご君は、死神を仰向けにすると、心臓マッサージを始めた。一分間に、100から120回のペース。行進曲のピッチぐらいだ。ごるご君の頭の中には、軍艦マーチが浮かんでいる。途中で人工呼吸を、やったほうがいいとの説もあるが、最近の研究では胸部圧迫のみでも蘇生の可能性は、変わらないか、人工呼吸をやるより胸部圧迫のみのほうが高いとの説もある。

「ごるご君、AEDありません。」仲野さんが戻ってきた。「部屋の人に聞いたのですが、死人にAEDは必要がない、と言われました。」
「それじゃ、救急車は?」
戸田さんは、そのまま後ろにいた。
「大丈夫ですよ。少し離れてください。」にこやかに戸田さんが言った。
ごるご君は、胸部圧迫をやめて、死神から離れた。
戸田さんは、死神に近づくと、「失礼いたします。」と、明るく言って、死神の頭を掴むと、頭を、ぐるりと回した。360度。


「う〜ん。おはようございます。」死神が言った。
仲野さんも、ごるご君もあっけにとられている。
「死神さまは、お休みになられていただけです。」戸田さんが言った。

「おい、死神!おまえは昔から、そんな寝方なのか?」怒った声で、ごるご君が聞く。
「いえ、これは、最近、仕事が多すぎて突然寝していることが多いだけです。」死神が言い訳がましく答えた。
「そっちじゃなくて、首。どんな首しているんだ?」
「これは、まぁ、前から回ることは回りました。」
「ふ〜ん。借金しないタイプだな。どこで私腹肥やしてやがる?」
ごるご君の声が荒くなる。
「そういうわけでは、ございません。」
死神は、情けない声で言った。

「まぁ、いいや。新しいプロジェクトの打合せしたいんだけど、会議室貸して。」
ごるご君が言った。やっと本題を思い出したようだ。
「会議室ですか、何人ぐらいで使われますか?」
「今日は、たぶん5〜6人かな。内容によっては、少し増やしてもらうかもしれない。プロジェクター使える所ね。」
「OHPなら、知っていますが、プロジェクターとは何ですか?」
死神が聞く。説明は、面倒だ。「オーバーヘッドじゃないヤツだよ。ま、スクリーンさえあればいいや、本体は持ってきたから。」
「それでは、部屋を確認してみます。」死神が言う。
「すぐね。」ごるご君が、鋭い声で言った。
「部屋、決まったら教えて。ちょっと銭形さんのところに行くから。あと、戸田さんも会議に参加してもらえませんか?」ごるご君が言った。
「私ですか?」戸田さんが言った。
「そう。死神より、よほど内情がわかっているようだから。」
「でも、それは、死神さまのお許しをいただかないと。」
「大丈夫。なっ!」ごるご君は、死神のほうを見て言った。
「はぁ。どのぐらいの、お時間でしょうか?」
死神が聞く。
「終わるまでに決まってるだろ。長引いたら残業代ちゃんとつけてあげてね。」
「わかりました。」死神の声は死人のようだ。

ごるご君と仲野さんは部屋を出て、セキュリティーゲートに向かった。
銭形さんが忙しそうに仕事をしている。
「銭形さん。」ごるご君が話しかける。
銭形さんは、「ごるご君、少しだけ待っててください。」と言って近くの人に何か指示を与えている。
待合室のほうを見ると、待つ人が少し増えている。
不安げな顔の人も多い。
「役所の手続きを待つようなものですね。」仲野さんが、ぽつりと言った。
「あの世も、この世も同じようなものです。」ごるご君は、したり顔で答えた。

その時、先ほどの部屋の係りの女性が、順番がきた人を呼んだ。
「むとうさん、むとうみどりさん、お入りください。」
しかし、返事がない。
係りの女性は、待合室に出て、「むとうさ~ん。」と叫んでいる。
ごるご君たちの近くの椅子に腰をおろしていた老婆が、おどろいたように顔をあげて、立ち上がった。
係りの女性は、老婆を確認して、ほっとしたように近づく。
「むとうさんですね。順番がきましたので、お入りください。」
老婆は、小さな声で、「申し訳ありません。長く待っていたら眠くなって居眠りをしてしまっていました。ほんとうにすみません。」と恐縮している。係りの女性につきそわれるようにして、老婆はゆっくり歩き始めた。係りの女性もせかす様子はない。
二人が、ゆっくりと扉の前まで行くと、扉は自動で開く。
二人は、扉の中に消えていく。
二人の姿が見えなくなると、扉は音もなく閉じられた。

「呼び出しの効率も悪いですね。しかも、こんな何もないところでは居眠りしても仕方ないですよ。」
仲野さんが、ぽつりと言った。
「閻魔大王の審判を待つまでの間って、どんな気分なんでしょうね?」ごるご君が言った。
「それは、わかりませんが先ほどは、呼び出してから部屋に入るまでに3分以上かかっています。10人いたら30分のロスです、これを2分以内にするだけで、この部屋で待つ人は、2/3にできる計算です。この先の処理の効率がいい場合ですが。」仲野さんは現実的だ。そして問題を的確に見つける。
「これに関しては、待ち時間の表示をしたり番号札を配ることで少しは改善できるかもしれませんね。」ごるご君は、転入手続きで区役所に行った時のことを思い出しながら言った。待ち時間がある程度わかれば、準備もやりやすいものだ。しかし今の現状では、ここでは待つこと以外にやることがない。ちょっと、お茶を飲めるような所も設ければ、気持ちも変わるだろう。

「お待たせして申し訳ございません。」
銭形さんがやってきた。
「銭形さん、時間はあるので大丈夫です。以前お話しした閻魔大王に渡す資料作りの件ですが、打ち合わせをしたいのですが、お時間は大丈夫ですか?」ごるご君が聞いた。
「今日、こちらに来られると伺っていたので、時間は空けられます。例のハッカーも呼んであります。やり手を二人みつけてあります。すでに別室で待たせてありますので、ご紹介しますよ。」
銭形さんに案内されて、セキュリティの管理部屋の中に入る、パーテーションで仕切られた中に、ハッカーたちはいた。二人は、何やら議論を交わしているようだ。

「Windowsは、機能が増えすぎて脆弱性が露見している。」
「インターネット回線も、ISDNになって、ずいぶんと使い勝手がよくなった。」
「やっぱり、CPUは、ペン4がいい。」
「俺は、新しいデュアルコアのCPUに期待している。」
「あれは、まだ信頼性が、どうかわからない。」
「そういえば、長いことコンピュータに接してない。」
「本当に。退屈でたまらない。」



「お待たせしました。ごるご君が来られました。」
銭形さんは、パーテーションの外から声をかけた。
「どうぞ。」パーテーションの中から、声がかえってきた。

銭形さんは、パーテーションの扉を開いて中に入る、ごるご君と仲野さんも続く。
「こちらが、ごるご君と、仲野さんです。」
銭形さんが、二人に紹介した。
「はじめまして、ごるご君です。よろしくお願いします。」
「仲野です。はじめまして。」
二人は、自己紹介をした。
ハッカーの二人は立ち上がって、頭を下げた。

「俺は、トミー。」
年長に見える男が言った。年長とは言っても、まだ若い。20代半ばぐらいか。
「僕は、マツ。」
もう一人の男が言った。20歳ぐらいに見える。

「二人とも、初めての人との会話は苦手なようです。でも、セキュリティゲートの仕組みなどは、1度教えただけで、ずいぶん理解しています。器用だと思いますよ。二人とも、コンピュータは大好きなようです。」
二人のうちのどちらかが、かの有名なコンピュータ・ウイルス「とっぽいの木馬」を作ってばらまいたと銭形さんに聞いている。しかし、そんなことはどうでもいい。必要なのは二人の能力である。そして、二人とも、すでにこの世の人ではない事実が、ごるご君たちにとっては、とてつもなく都合のいい話なのである。

「さて、お二人にお願いがあります。その前に、これを見てください。」
ごるご君は、コドバシカメラで買ってきたノートパソコンを、1台ずつ二人に手渡した。2019年最新の高スペックモデルだ。15インチほどのディスプレイでクアッドコアのCore i7だ。SSD搭載でメモリーも16GB、1台あたり20万以上かかっている。
二人は、パソコンを受け取ると、電源を入れた。そして、あれこれと確認している。すぐに二人の顔が笑顔になる。
「こんな、怪物のようなマシーン、誰が作った?」
トミーが聞いた。
「今は、普通に売られていますよ。高いけど。」
ごるご君が、言った。
マツは、まだ熱心にキーボードをたたいている。

「二人とも、これほしい?」
ごるご君が言った。

「ほしい。」二人が同時に言った。
長いことコンピュータから離れていた二人にとって、このパソコンは、最も手に入れたい品物だ。
「それじゃ、これからの打ち合わせに参加してください。そして、働いてもらえることになれば、それは、プレゼントします。」
ごるご君の言葉に二人の顔が輝いた。


「ごるご様、ごるご様、会議室の準備が整いました。」
館内放送が響く。戸田さんの声だ。
「霊柩ホールにお越しください。」
放送が続いた。

「銭形さん、霊柩ホールは、わかりますか?」
ごるご君が聞いた。
「ここでは一番設備が整ったホールです。行きますか。」
銭形さんが答える。
「行きましょう。みんな来てください。」
仲野さんと、トミーとマツに声をかけた。

「これ、持って行っていいですか?」
マツが聞いた。

「どうぞ、持ってきてください。」
ごるご君が答える。

トミーとマツは、ノートパソコンを大切そうに抱えてついてくる。
銭形さんを先頭に、ごるご君、仲野さん、トミーとマツが続く。

待合室を通りすぎて、これまで見たことのなかった長い廊下を歩く。
閻魔大王との面談の部屋の入口とは違った方向だ。
この建物のつくりはわかりにくい。
狭いような気がする時もあるが、どこかの方角に無限に広がっている感じもある。

廊下には、いくつかの扉があった。
扉の先は、どこへ続いているのだろう?
ごるご君が後ろを振り返ると、仲野さんは緊張の面持ちだ。
トミーとマツは、パソコンに目をやっている。

いくつめかの扉の前に戸田さんが待っていてくれた。
「ここですね。」銭形さんが言った。
「おつかれさまです。」戸田さんが扉を開ける。

銭形さんに続いて、仲野さんと、トミーとマツは部屋に入っていった。
戸田さんの前に立ち止まった、ごるご君は戸田さんに言った。
「戸田さん、ごるご様と呼ぶのは、やめてください。僕は、ごるご君です。」
「でも、大切なお客様ですから。」戸田さんが答える。
「僕は、ごるご君と呼ばれるほうがいいので、お願いします。」
「そうですか、わかりました。」戸田さんが言った。
「後で、死神様も来られるそうです。」

「そうですか。わかりました。とりあえずメンバーも揃ったので、戸田さんも入ってください。」
ごるご君が、霊柩ホールに入った。
続いて、戸田さんもホールに入った。

10人ほどが座れる楕円のテーブルが置かれていた。
奥には、間口の広い仏壇のようなものがある。

「ごるご君、様。」戸田さんが言いにくそうに、ごるご君を呼ぶ。

「はい。」
ごるご君が答えた。

「プロジェクター、必要ですよね。」
「お願いします。」

戸田さんが、リモコンのスイッチを操作すると、おもむろに正面の仏壇のようなものの扉が開く。
中には、白いワイドスクリーンがあった。

「これで大丈夫でしょうか?」
「じゅうぶんです。ありがとうございます。」
ごるご君は、満足そうに答えた。

仲野さんと、ごるご君は、プロジェクターの準備にかかる。
銭形さんと、戸田さんにも、ノートパソコンを渡す。

「このパソコンと、プロジェクターでプレゼンします。準備ができるまで少々お待ちください。」
仲野さんが言った。
トミーとマツは、仲野さんの言葉が耳に入っているのかどうか?
席につくなり、ノートパソコンを開いて、何かしらやっている。

銭形さんと戸田さんも、パソコンには慣れているようだ。
何も説明しなくても、電源を入れて、何かしら確認している。
この中では、ごるご君が最もパソコンに習熟していないかもしれない。
キーボード、一本指打法である。
しかも打率正解率は低い。
まちがい入力のホームラン王だ。

「それでは、プレゼンテーションを始めさせていただきます。」


仲野さんが、壇上に上がって、大きな声で宣言した。
霊柩ホールの照明が少し暗くなって、仲野さんにスポットライトがあたった。




続く。








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